夢3c

「人はね、人を幸せにすることはできないの」
彼女の唇は、いつか聞いたことのあるフレーズを紡いだ。
——だから、あなたがするべきことは、他にあるはずよ
あのとき彼女が続けた言葉が脳裏に蘇る。
「あなたは今、幸せ?」
けれど、彼女は瞳をそらさずにそう言って
だから僕も、その琥珀色の目を見つめて答えるしかなかった。
「そう、なら、わたしも幸せ」


彼女を抱きしめる権利は僕にはなく、事実それは許されなかったらしい。
彼女は薄く微笑みながら、あっさりとその存在を終えた。
僕がその胸に突き立てた短剣が床に落ちる硬質の音が、誰もいなくなったバルコニーに小さく響いた後は、
もうそこには何もなかった。