夢3b

「はじめに言ったわ。わたしはみんなを不幸にする。だから、あなたはわたしを殺さないといけないって。でも、あなたはそうはしなかった。すごく嬉しかった。本当にありがとう。わたしを生かしておいてくれて」
その満ちたりた声色に、大切な思い出が汚されていく気がする。
彼女はもういないのかもしれない。彼がいうように、変わってしまったのだろうか。
それとも最初からすべてまやかしで、彼女は僕を欺いていたのかもしれない。
だとしたら、おそらく、僕には悩む理由なんてないのだろう。
僕のことなんてお構いなしに、彼女の影は語り続ける。


「でも、それももうおしまい。あなたはあなたの信じる正義に従って、ここまで来たわ。だからわたしは、ここで死ぬの。それがあなたのすること。そして、それがわたしの役割の終わり」
明るく微笑んで、彼女は言葉を継いだ。
「ほら、早くしないと、またたくさんの人たちが死ぬわ。ここには誰もいないし、わたしはなにもしないから。今ならとても簡単に、何もかもが終わらせられる。それが、いつも間違うあなたの、大事な大事な使命だもの」


だとしても、みんなを幸せにするのが僕の願いだから。
そう答えることしかできない僕に。
彼女は少し躊躇って、呆れたように、でも、とても優しく囁いた。
「あなたは神さまじゃないわ。でも、ここにいるのよ」
もう、迷いはなかった。そして彼女も、嘘をついてはいなかった。
それを理解しながら、乾いた心は機械のように体を動かして、僕のすべきことを行い、


二つの影は重なり、一つになる。